「ムーンガーデン」の女主人は、

私が主人公の物語を 話してくれました。

 
幼いころ、眠る前に 物語を読んでくれたのは母でした。
なんども読んでくれるものだから、ほとんど覚えてしまっていたけれど。
 
たまに母は、主人公を私にして読んでくれました。
それだけで、とてもドキドキして、楽しくて…
ずっと聞いていたいけど、眠たくて、気持ちがよくて…
 
大人になり、私にも たくさんのエピソードができました。
たぶん 未来のエピソードも、いっぱいできるのでしょう。
 
それらをつなげば、私の物語は完成するのだけれど
そんなの本屋には売っていないし、母にも語ることはできません。
 
不安なとき、悩んでいるとき、苦しいときに思います。
 
この、私の物語を聞かせてほしいと。
自分のことが大切で、大好きだと思える物語を聞かせて欲しいと。
 
「ムーンガーデン」は、この願いを叶えてくれる場所です。
 
その秘密のお庭には 不思議な女主人がいて、
ゆっくりと 落ち着いた口調で、過去や未来のエピソードを語ってくれました。
 
ずっと聞きたかった、私が主人公の物語。
それを聞かせてくれた不思議な女主人は、占い師でした。